◆ 連載第6回 ◆
アピスト採集の心得の巻

(前回までのあらすじ)
 アピスト新種、「sp.ミウア」の成魚サイズを唯一採集し、かなりご満悦の私こと「まる」と、成果はそれなりどころか、大漁なのに成魚が採れなくてやや不満(?)の御一行皆様は、ミウア川を後に、ネグロ川を上り、サンガブリエルの町に引き返すことになった。

 

 

 ミウア川を出て、本流のネグロ川に出たところで、丁度良いアピストポイントがあったので、そこで採集することにする。ここで僕は、今考えるともったいないことだが、採集しなかった。お腹一杯胸一杯で満足していたのと、サンガブリエルからの帰りは飛行機なので、あまり荷物を持てないと判断したのと、採れるのはロートカイルだ。との声を聞いたからだ。
 この時、S師匠の、××××みたいなのが採れた?のひと言を、まさか、見間違えでしょう、他に誰も採れていないし。と、あまり気にも止めなかったのが、今になって悔やまれる。結局ここでは、S師匠が少し採っただけで、あまり採集はできなかったようである。
 日もやや暮れかかる頃、出発した港(浜辺)についた。この時、記念に撮ったのが、アクアマガジン33号にのっている写真で、ガイドのYさんが、まだ珍しそうに、僕の採ったミウアを眺めているのが印象的だ。

 この日の夕食は、昨日と同じ、ホテルからちょっと川上に歩いたところにあるレストランでの夕食になった。昨日、今日と目的のアピストが採れたことで、それは大盛り上がりの夕食だった。食事もあらかた終わったときに、何か変な男が近づいてくる。良く見ると、あっ!ボロ舟の船長じゃないか!ごめんすっかり忘れてた。聞けば、今し方やっと帰りついたそうだ。当の本人は全然気にしてない様で、「今までで一番楽しい仕事だった。ありがとう。」などと言ってきた。僕らはポカーンとして、そんなものなのかなぁと顔を見合わせた。
 この日の夜は、なんとこの地域のインディオの部族対抗盆踊り大会をやるというので、Yさんに連れられて見に行った。部族で統一されたTシャツGパンの老若男女入り交じったチームだらけで、僕の想像した、入れ墨に槍持っている姿とは違うのかと思ったが、ビジュアル様にそうゆう格好の女性がいたので写真を撮った。盆踊りは、その時は分らなかったが、その当時、世界中で流行っていたマカレナなどを中心に、さすがにラテン系の人間と思われるようなキレのあるダンスをみんなが披露していた。こうしてミウアを採集した日は過ぎていった。だが、日本に帰って反省することしかりだった。

 出発前、私こと「まる」は、ネグロ川上流で採集することについて、目的通りエリザベサエが採れるほど甘いものではないのではと考えていた。そこで、洋書ではネグロ川のあちこちに点在すると書かれているあのアピストを狙いにすることにしていた。・・・・そうディプロタエニアである。私こと「まる」のアマゾン行きの本当の目的はディプロタエニア採集であったのである。
 後日、サンガブリエルからマナウスに帰る途中リオネグロにて、ガイドのYさんが、「サエ採集の予定が無かったら、ここでディプロを狙おうと思ったのですが、ここは宿泊施設がないのでちょっと難しいかな」と仰っていたのを聞いて、僕はディプロはやっぱり決まった産地があるのかと思って、採れなかったのはしょうがないという結論に達した。

 しかし帰国後、HさんK君の務めている「A倶楽部」で、日本に送られてきた採集魚を待っていると、一足早く魚を見てきたK君が、「ディプロが混じってる。」と仰天の告白をしてくれるではないか!!!K君達の大量の採集魚(K君とHさんはアグアとしていったのでその分Nさんらと協力して大量採集をしていた。)の中の、ロートカイルの袋の中に本当に入っていた!・・ただし死体で。僕が生まれて初めて生で見たディプロは死体だったが、独特の2重ラインがはっきりと分る、死体ながらに輝いて見える個体だった。
 当然、僕のロートカイルの袋も見てみましたが、ちゃんと到着した9匹のアピストはすべてロートカイルだった・・・。しばらくして、100匹近K君のロートカイル群の中に、一匹だけ生体のディプロが見つかり、僕もようやく生きているディプロを見ることができた。
 生きているディプロ、泳ぐディプロ、ボーっとするディプロ・・・。改めて僕のロートカイル群を見るが、何度見ても同じ。やっぱり入ってなかった・・・。
 後にS師匠もディプロを持ち込んだと聞いて、見せて頂いた。ちいさーい2センチほどの個体2匹で、1匹はサエ採集の日にロートカイルと混じって、もう1匹はミウア採集の日に、やはりロートカイルと混じって採れたものだと仰る。また、この時のロートカイルは、頬に赤が混じらない、いわゆる、セーゲルフロッセンと呼ばれるものであった。
 あまりにディプロを見ている僕に向かって、S師匠が言った「あの時、ディプロが採れたって言ったときは、誰も信じてくれなかったのになぁ。」とお嘆きの一言は、僕の心にズーンと来るものがあった。

 どうやらサエ採集の時の帰りのロートカイル採集の時に、僕が採っていた所とちょっと離れたところで採れたロートカイルの中にディプロが混じっていたようで、そういえば僕はあまり成果が無さそうだと、そこで採集しなかった事を思い出した。僕は、他のアピスト採集の成果に満足して2回もディプロ採集のチャンスをみすみす逃したことになる。日本に帰ってきてからだが、ちょっと落ち込んだ。
 また、日本に到着した魚の数も採ったときの1/2から3/4になってしまうのも反省材料であった。当時の自分の飼育環境が貧弱だった事もあるが(今も貧弱だが)、日本に持ち帰った魚の中で、ちゃんと繁殖させて系統が残っているのがロートカイルだけなのは、もっと魚の数を採っておかなかったのも原因の一つだと考えられるからだ。

 日本に帰ってからのこの反省を次に採集に行くときの心得としてまとめて、この連載を終えることにする。
・貪欲に採るべし。採っても採っても採り足りないのだ。雄雌比も派手に偏るし。
・ちょっと場所を変えても地域変種が有り得るから油断しないでゼロからと考えて採るべし。それに付随してロカリティは重要であるということも言えるので、地域別に区別して、地域名もできるだけ明らかにする。
・同じ場所で採れるのは一種類とは限らない。ちょっと離れたところにもどんな珍種がいるかわからない。
 今度行くときはこの教訓を活かして頑張るぞー!・・・いつになるか分らないけど・・・。

 

 

 最後まで読んでくださった方、本当にどうもありがとうございます。これにて、ミウア編は最後になりますが、次は、何にしましょう?マナウス編、ベネズエラ街道編、パンタナル編。このうちどれかでお会いしましょう。

 
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